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2020.10.22

『僕の野球人生』第14回 有賀雄野学生コーチ

『僕の野球人生』第14回

有賀 雄野 学生コーチ(4年/都立西)

有賀(加工済)

僕がこの部を目指したきっかけは先輩です。高校の先輩であった桐生さん(H29卒)が当時六大学でベストナインを獲る活躍を魅せていました。全く考えもしなかった大学野球という世界。自分も挑戦したいという気持ちと無謀とも思える気持ち。このときはまだ半々ぐらいだったと思います。

「東大では個人ではなくチームで自己実現するしかない」。当時のキャプテンである山田さん(H30卒)はあくまで勝つ集団にこだわり続けました。個人で劣ってもチームは勝てる。そのことを証明し切るその背に、迷いは消えていました。

やらせてもらっておいてこんなことを言うのもおこがましいですが、小さい頃から野球を楽しいと感じた記憶はほぼありません。勝てない悔しさ、実力不足への不安、試合前日に襲う恐怖心。僕にとってその多くは、劣等感と葛藤に苛まれたものでした。

4年間という決して短くない期間の中で、僕は一度本気で部を辞めようとしたことがあります。リーグ戦でのあるミスが原因でメンバーから外されたことがきっかけでした。今年結果がでなければ選手を辞める。勝負の年と位置付け、望んだシーズン開幕。その矢先の出来事でした。シーズン途中自分のポジションで欠員が出ても、自分には何をすることもできない。実力を試すことすら出来ず、ただシーズンだけが終わっていく。周りからどう見えていたかは知りませんが、正直に言って気持ちを整理するのが難しかったです。気を遣ってくれたチームメイトにさえ複雑な感情を抱いてしまうこともありました。その全てをここに書くことはできません。しかしこのとき、自分自身の中でなにかが大きく変化していたことはたしかです。

自力で劣っていても勝つために何が必要なのか。いま自分には何が求められ、何をすべきなのか。それなりに真剣に野球と向き合っていたつもりでしたが、気がつくとそんな自分自身に対して、どこか冷めた感情を抱くようになっていました。

今になって思えば、そんなことは自分に限った話ではありません。表には出さなくとも、それぞれが葛藤や悩み、不安を抱え、グラウンドに立っています。いつまで経っても埋まらない理想と現実の差を前に、落ち込みそうになる気持ちを抑え、時に自分で自分を鼓舞し、時に仲間と励まし合い、時に後退し、時に立ち止まっても、それぞれが必死で進もうとしています。たしかに東大野球部にとって、勝つことは何よりも優先されるべきことです。この部において本当の意味で全員が報われる瞬間は勝つことでしかあり得ないと思います。それほどまでに勝つということは大きい。それでも多くの人に感動を与えてきたのは、単なる勝敗や技術の鮮やかさではなかったと今では思います。どれだけ追い込まれても、最後まで食らい付いて、立ち向かっていく。ヒリヒリするような戦いに堂々と立ち向かっていく。勝ち負けを超えて、そんなみんなの姿がただただ眩しい。それが今の、無責任なまでの、素直な気持ちです。

そういえば野球を始めたての時、コーチからよく言われたコトバがあります。

「気づいた時には遅いんやで」

結局継続するということが一番大変で、当時から今に至るまで僕はそこが出来なかったんだと思います。というより、野球に対する覚悟を最後まで持てなかったのかもしれません。

こんなふうに書いていると野球を通して何か成長できたのか、正直自信はありません。個人的に応援していただいた方にも、選手として期待を裏切る結果となってしまいました。勝負の世界とはいえ、本当に申し訳なく思っております。それでも野球から本当に多くのことを学びました。野球を通してでなければ、ここまで多くの感情が出ることはなかっただろうと思います。そしてそれができたのは、チームメイトやマネージャーをはじめ、監督、コーチ、トレーナーの方、ファンの方、大会運営の方、そしてなにより、どんな時も味方でいてくれた家族がいたから。表に立っている人だけじゃなく、マネージャーをはじめ裏でサポートしてくれたたくさんの人がいてくれたから。そのことに深く感謝したいと思います。ありがとうございました。

今年は大変な年になりました。不安や焦り、そして期待。いつも以上に色々な想いを抱えながら選手たちはグラウンドに立っています。僕たちの野球人生は残りわずかとなりましたが、最後まで戦い続けます。

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次回は10/23(金)、加見学生コーチを予定しております。

お楽しみに!

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