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TOKYOROCKS2021 秋季号外 第2週
2021年9月22日掲載

東大は今春リーグ最終戦で64連敗をようやく止める一勝を上げた。コロナ禍による特別運用下とはいえ、リーグ最終戦を勝利で飾ることは東大としては過去にそうあることではない。肩を震わせる何人かの四年生の姿に、ネット裏の筆者の目頭は不覚にも熱くなった。だが、考えてみれば4年振りに一勝しただけの話である。歯ごたえのないチームであっては、5大学野球部にも、神宮に足を運んで下さる観客の方々にも誠に申し訳ない。久々の勝利の瞬間、現役の学生たちは「たったひとつ」勝って喜んだのではなく、4年越しの重しを振り払った安堵とともに、秋に向けた手応えを感じていたのだ、と思いたい。

ところで六大学の中で東大だけにある特徴がいくつか挙げられる。そのひとつが「校歌がない」ことである。現在神宮球場で歌われている「ただひとつ」は正式には「東京大学応援歌」で、戦前の帝大時代から校歌制定が試みられたようだが、未だ日の目は見ていない。如何にも百家争鳴の東大らしい歴史である。私たちも四十余年前の現役時代、試合前に斉唱して自らを鼓舞した「ただひとつ」。他校の何れ劣らぬ名歌の重みに比べると、やや分が悪いきらいはあるものの、当事者にとって愛着はある。

今秋は、歌名に例えれば「ただひとつ」でなく「もうひとつ」勝って、東大の次なる懸案である連勝・勝点奪取を期待したい。「だがひとつ」まずは勝ってからの話。

ここぞの「一球入魂」、神宮での出来事は全てが「一期一会」。私が思う「ただひとつ」の根本精神は、「今ある自分を受入れたうえで出来る最善の努力を一瞬一瞬に積み重ねる」ということだ。私としては、東大に限らず六大学野球全部員の「ひとつ」にこだわる全力プレー、スポーツマンシップ溢れる瞬時の行動をこれからも神宮で確と見届けていきたい。