東京六大学野球リーグ戦は、それぞれ6校の対抗戦の集約である。その中で、早慶戦に関しては、その対抗戦の歴史からも学生野球にとって最も注目される試合であり、両校の早慶戦に対する意気込みはもの凄いものがある。
私が、4年で主務を務めていた頃の春の早慶戦。前年秋に13年ぶりにリーグ戦優勝、それも57年ぶり2回目の全勝優勝という快挙、その後の明治神宮大会でも優勝、春は2回目のアメリカ西海岸でのキャンプと、全てにおいて勢いにのっていた慶應野球部は開幕した春季リーグ戦でも2勝1敗のペースながら勝ち点を落とさずに第8週である早慶戦を迎える。1勝1敗で迎えた3回戦、慶應は終盤まで優位に試合を進め2点差で迎えた最終回。アンラッキーなイレギュラーバウンドによる出塁から早稲田の驚異の粘りが始まり、1点差に迫られ尚も2死2,3塁とピンチが続く。しかしながら、打者を2ナッシングと追い込みいよいよあと1球で優勝と思った瞬間、打球は右中間を破り逆転サヨナラ打となった。
早慶戦で勝ち点を取れなかった慶應は、勝率の差で法政に優勝を奪われてしまった。2季連続優勝を掴みかけながら、逸してしまった瞬間である。時間が止まって見えた。
早稲田に優勝の目はなかったのであるが、早慶戦に対する凄まじい意気込みを実感した。いつも試合後は感情を表に出さないようにして、連盟事務室に戻り残務を行うのが六大学のマネージャーとしてのあるべき姿と教わってきたが、その日ばかりは悔し涙が止まらない。見かねた当時の連盟事務局長であった故・長船麒郎氏に配慮頂き、その日は直ぐに帰して頂いたことを思い出す。
今季も、優勝のかかった早慶戦になった。優勝だけでなく対抗戦としての意地と意地のぶつかり合いを期待している。そして、最後には悔し涙ではなくうれし涙を流してほしいと願っている。