平成4年春のリーグ戦、前年の春秋リーグ戦連覇を受けて3連覇を目指し意気込んで臨んだが、結果は4勝6敗の5位。惨敗であった。主将としての不甲斐なさ、一選手としての悔しさが湧きたつ中、夏季練習を前に「チームとして何をすべきか?」と考えに耽っていた。
そんな時、同期が「4年全員で話し会おう」と声を掛けてくれた。喧々諤々、それぞれが思いの丈をぶつけあい話し合った。出した結論が「チームの勝利のために全員が納得するプレーをすること」。試合に出るメンバーは、塾野球部の代表であり、控えメンバーの思いを背負ってプレーせねばならない。結果がどうあれ、どんなコンディションでも言い訳をせずに部員全員、そして塾生の期待に応えるべく精一杯のプレーすることを誓い合った。目指すべき目標はもちろん「リーグ優勝、そして日本一」であるが、それに対するアプローチを確認し、自分たちが為すべきことが明確となった。
迎えた夏季練習は、これまでにない充実した練習であった。ベンチに入っていない4年生が率先して練習の手伝いを務めてくれ、神宮球場で行う試合前の練習までサポートしてくれた。リーグ戦の試合中はベンチ上のスタンド最前列で、雨の中でも声援してくれていた。そんな思いに応えるべく我々メンバーは必死に戦った。手薄だった投手陣では、4年春まで殆どリーグ戦で登板の無かった同期の松本投手がエースとなり大活躍、春は繋がりを欠いた打撃陣も奮起した。個々が役割を全うし、同じ方向を目指して戦い続けた結果、勝ち点5の完全優勝、そして明治神宮大会優勝し、有終の美を飾ることが出来た。そして、スタンドの塾生、応援指導部、家族、ファンの皆様に優勝という報告が出来たのが何よりの喜びであった。
今でも思い出されるのは、リーグ戦の各試合の内容よりも、あの夏のミーティングとその後の夏季練習、そしてチーム全体の思いが実を結んだ優勝の瞬間である。チームとして戦う事の大切さを再確認し優勝までの道のりを共に歩んだ同期に感謝し、前田監督の教えである「エンジョイベースボール」を経験させてくれた神宮球場に感謝したい。