学生野球のメッカと呼ばれる明治神宮野球場で行われる東京六大学野球は、私にとって憧れの原風景であり、あの唯一無二、独特の雰囲気に包まれる場所は、私に青春の心を思い出させ、時に鼓舞し、今でも成長させてくれる、言わば心の故郷であります。天高くこだまする応援団の声、カラダの芯まで感じる太鼓の響き。試合の流れを敏感に感じ取る生粋の野球ファンのどよめき、好プレーに対する盛大で惜しみない拍手。各校学生の応援。運営を支えるOB。同窓の仲間、かつてのライバルたち。六大学の各選手たちはそんな最高の舞台で、先人たちが守り、積み上げてきた歴史と伝統を感じ、自校のプライドをかけて熱戦を繰り広げる。これらすべてのひとつひとつが、これからも東京六大学野球が東京六大学野球であり続けるためには欠かすことが出来ない、守っていくべき要素だと思います。
また、近年、日本野球界ではアメリカのメジャーリーグで二刀流で大活躍する大谷翔平選手や日本プロ野球で史上最年少で完全試合を達成した佐々木朗希選手を輩出するなど、統計学・測定技術の発達に基づく評価・技術の革新、フィジカルの向上等により、個々のプレーヤー単体としてのレベルが急速かつ飛躍的な進化を遂げています。このことは野球というスポーツ全体のレベルアップとして大変歓迎すべきことであり、今後、大谷選手や佐々木選手を超えるような記録的な成績を残す型破りな選手が東京六大学野球からもたくさん出てくることを楽しみにしています。
一方、個人の活躍がクローズアップされる中でも、やはり野球は団体スポーツであり、特にアマチュア野球では、個々の力の結集の結果、チームワークで勝敗が決まるという野球本来の醍醐味も失ってもらいたくないと思います。東京六大学野球は、各校がそれぞれに独自の特色を持っており、各校がそれぞれ「○○大学らしい」戦いをすることが東京六大学野球の魅力でもあり、これからも各校の戦いぶりに注目していきたいと思います。