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『僕の野球人生』第13回 辻村和樹内野手

『僕の野球人生』第13回

辻村 和樹 内野手(4年/県立千葉)

R3.05.01vsK② (296)辻村②

[(左から)吉田主務(4年/栄光学園)、辻村内野手]

僕の野球人生もあと1ヶ月。最後の最後まで、自分らしく、全力で駆け抜けます。

大学に入ってからは不安障害と闘う日々でした。色の失われた世界を彷徨う日々。そんな中で自分を支えてくれたのが僕の野球人生そのものです。

母が作ってくれたユニフォームで父とグラウンドの隅でしたキャッチボール。「上手くなったな」もっと上手くなって褒められたい!絶対に負けたくない!そう気を張るのが末っ子の性。褒められるのが嬉しくてたまらなく、負けるのが悔しくてたまらなく、夢中にボールを追いかけ、僕の野球人生は始まりました。

小学生。熱く、おおらかで、暖かい。そんな地元のみんな、保護者の方々、指導者の方々に囲まれ、ただただ夢中に思いっきり野球をしました。大人でも子供でも思いっきりぶつかって、思いっきり笑って、思いっきり楽しんで、思いっきり悔しがって。野球の楽しさを、地元の暖かさを心の底から感じながら、明るい将来を思い描き、友達と語り合って日々を過ごしました。純粋に野球が楽しくてたまらなかった原点であり、いつでも帰ることができる、いつになっても変わらずに暖かく包んでくれる、故郷です。

中学生。体の大きな先輩。しっかりとした上下関係。自主的に頭を使ってやる野球。野球以外のことから全力を尽くし、応援される人間、応援されるチームになる。そんな先輩に憧れを抱き、自分もそんな先輩になるんだと必死でした。死んでも悔いを残して終わりたくない。そう挑んだ真夏の4連戦。自分たちの努力で、確かに自分たちの手で、目標であった県大会出場を掴み取った瞬間の、言葉では表せないほどの高揚感、達成感。あの時に味わった、みんなで噛み締めた喜びを知っているからこそ、何があってもへこたれず諦めない自分が今もいます。

高校生。「はい!はい!すみません!」なんじゃこりゃ。そんな理不尽にもなんとかついていく中で叩き込まれたこと。両親をはじめ、恵まれた環境で野球をさせてもらえることに対する感謝の思いを絶対に忘れることなく、いつどんな時でも謙虚に、ひたむきに、泥臭く。「やるんだ、粘るんだ、食らいつけ」歯を食いしばったその先にしか見ることのできない景色がある。みんなで学んで、みんなでぶつけ合って、みんなで作り上げた。一人ひとり、ひと時ひとときが今も自慢で、大切な人が与えてくれる力の大きさを教えてくれました。

強い志と友情さえあればなんだってやってやれるんじゃないか、そんな信念を持って大学野球への挑戦に足を踏み出した自分は理想と現実の差に苦しみ続けました。発作の頻度は増え、日常から当たり前が消え去りました。もう心も体も、もはや自分のものではない。ただボールを捕って投げる、それだけのことが普通にできず、何が何だか分からない。大好きだったはずの野球も怖くて仕方がない。果たして自分は何を信じ、どこへ向かって進めば良いのか。暗闇を彷徨っている間に3年が過ぎました。いつかきっと、また思い切り体を動かして、頭をフル回転させて夢中に野球ができる日々が来る。存在するのかもわからない可能性に賭け、選手として最後の挑戦をすると決め挑んだラストイヤー。文字通り24時間襲い来る不安と恐怖から逃れるべく、とにかく動き続けました。一向に先が開けることはなく、情けなく不甲斐ない自分を許すことのできない自分が追い討ちをかけ、やがて部屋に戻るとベッドの上から動けない日々が続きました。動けない自分を、それでも追いかけ回す不安と恐怖。あらゆる希望の光が消えていった時、最後の最後に唯一自分の中に残ったものに気づきました。これまでの野球人生でのたくさんの、素晴らしい出会い。大好きな方々が教えてくれたこと。いつになっても自分に力をくれるみんなとの思い出。明珠在掌。誇らしい過去は決して変わることも、消えてなくなることもなく、いつだって自分の胸の中にありました。だからこそ、後ろを振り返ることなく、常に前を向いて、日々新しい自分に出会いながら進んでいく。その道中でいくら世界の色が変わろうとも自分を失うことなく、どんなに自分を脅かすものがあろうとも、僕は負けずに進み続けます。これまでの3年間、あらゆる生半可な覚悟、無駄なプライド、くだらない先入観は全て弾き返され、握り潰されてきました。でも、今は違います。大切なこと、格好良いこと、強さ、全部これまでの出会いが教えてくれました。だから、何があっても上を向きます。

みんなが主役のチームを。これが常に自分の願いでした。いつでも、先輩、後輩、指導者の方々、サポートや応援をしてくれる方々、そして同期の仲間たちが大好きだったから。自分に懸けてくれた想いになんとかして応えたい。自分の想いに応えてくれた瞬間。この時に自分の中に湧き上がってくる感情が好きでたまらないのです。時間とともにいろいろな経験と感情を共にした人たちと、ここ一番の大勝負に臨む時、心で繋がった仲間が自分に与えてくれる力の大きさと、それを余すことなく存分に使い切るときの何にも表し難いあの感情。これを超えるものに出会ったことがありません。だからこそ、みんながくれた素敵な時間を、みんなが僕にくれた最高の感動を、みんなにも味わって欲しかった。試合に出られるのは9人。でも、僕にとっては全員が掛け替えのない大切な存在であり、そして全員の力が合わさったときの爆発力は半端ではありませんでした。心の底から自慢に思えるチームを作って、最高の仲間を率いて強敵を打ち負かしてやるんだ。俺たちが負けるわけがない。いや、負けてたまるか。しかし、年齢を重ね、レベルが上がるにつれ現実の重みは増し、これを貫き通すことも難しくなりました。いつだって悔しさと申し訳なさが残り、ここまで野球を続けてきました。それでも、僕は自分を、これまでの出会いを信じています。

僕がこれまで歩んできた道は、いつでも本当にたくさんの、心の底から大好きな方々に包まれていました。そして、そんな方々と一緒に常に全力を尽くしてきた日々は、大きな財産として、宝物として、自分そのものとして今の自分を創り上げてきました。それは、行く場を失った自分をいつでも迎え入れてくれる場所であり、自分の進むべき方向を指し示してくれる道標であり、自分の世界に光を与えてくれる希望です。この道もあと少しで一区切り。でも、見えているのは一本の真っ直ぐな道のみです。残された時間は少なく、どこまでできるかはわからない。それでも、絶対に負けずに、全ての出会いと感謝の気持ちを胸に、最後の最後まで全力で挑戦します。どうにか、この感謝の気持ちが伝わるように、これまでに教えてくれたことを身をもって示せるように、ずっと信じてきたことを叶えられるように、全精力を懸け、闘います。

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次回は10/1(金)、馬場内野手を予定しております。

お楽しみに!