『僕の野球人生』第10回 山田燎投手
『僕の野球人生』第10回
僕の人生は非常に恵まれています。幼少期から現在に至るまで、親には何不自由なく育ててもらい、両親以外にもたくさんの人が僕を支えてくれました。
また、僕の野球人生も恵まれています。お世辞にも運動神経があるとはいえませんが、健康な身体のおかげで大きな怪我とは無縁でした。
そして、東大野球部においても僕は恵まれています。僕は野球の実力も上位ではなく、面白い人間でもありませんでしたが、多くの人が仲良くしてくれました。僕と関わった全ての人のおかげで毎日の練習はとても楽しいものでした。
引退した後も会うたびに気遣ってくれるあの先輩や、特に内容もない連絡を唐突にしてくるあの先輩。いつも僕をイジっているけど実は不器用なあの同期や、いつも怒っているけど常に自分よりもチームを優先して考えているあの同期。潜在能力はあるのになぜか練習中に筋トレばかりしているあの後輩や、僕と同期であるかのように振る舞うあの後輩。
大袈裟ではなくこの4年間で関わった全ての人が、僕の東大野球部生活を楽しいものにしてくれました。少なくともこれを読んでいるあなたは間違いなく僕を支えてくれた一人です。最初は少し面倒だと思ってしまった時もありましたが、今振り返ると非常に恵まれた環境であったと実感しています。
僕の野球人生はあとひと月程で幕を閉じるわけですが、このように今振り返ると、後悔などあろうはずがありません。勿論、リーグ戦の舞台に立てなかったことは非常に残念ではありますが、目標に向かって努力した過程は納得のいくものであり、思い残すことは何もありません。全ての人々に感謝して、僕の「僕の野球人生」に代えさせていただきます。
嘘です。
心残りが1つだけあります。
僕個人に関しては何も悔いはないのですが、チームに対して1つ後悔があります。
色々な人から様々な考えを聞いてきた僕は、チームが別々の方向に向かいつつあることに気付きつつも、面倒なことに巻き込まれたくないからと誰に対しても肯定するのみでした。そして現在、僕の思い過ごしかもしれませんが(思い過ごしであればいいのですが)、残りの1か月ではどうしようもない状態となってしまいました。
22年間生きてきてうっすら気付き始めたのですが、僕はあまり他人に興味が無いです。悪い表現をすれば、周りの人間が何をしていようが自分に関係なければ特に何も思いません。
ただ、自身の利害よりもチームのあるべき姿を追求する彼ら彼女らの姿は、いつの間にか少しずつ僕の考えを変えていきました。
そうして今振り返ると、自分なりに東大野球部を良い方向に導こうとしている人がいるにもかかわらず、傍観するのみであったことは、後ろめたさを感じています。
1人でも多くの人が納得のいく最後を迎えられることを、恵まれた野球人生だったと思えることを心から願います。
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次回は9/25(日)、守屋捕手を予定しております。
お楽しみに!