『僕の野球人生』第6回 小髙峯頌大投手
『僕の野球人生』第6回
小髙峯 頌大 投手 (4年/筑波大附)
高校野球生活が終わったとき、東大で野球を続けるという選択肢が自分の中で当然のようにありました。これは間違いなく自分が生まれる前からその道をつないでくださった高校の先輩方がいらっしゃったからです。今日から3日間続く筑附三羽烏(笑)の『僕の野球人生』の初めに自分が代表して感謝申し上げます。ありがとうございました。
野球を始めてから今に至るまで何不自由なくプレーさせていただきました。しかし、振り返ってみると自分の思い通りになったことの方が少なかったように思います。ある程度の覚悟をもって入部した東大野球部での4年間も例外ではありませんでした。
他大学はおろか、チームメイトとの間ですら埋まらない実力差。故障から満足に練習できない期間。活動自体を制限した社会状況と、それに伴い消えていくアピールの場等々。自分が招いたものだけでなくそもそも人間にはどうしようもねえなこれみたいなことまで色々ありました。(せいぜい23年しか生きていない若造が知った口をきくなと言われるかもしれませんが、おそらくこの先の人生もそんなものなんだろうと思っていて、それに関してはもう本当に勘弁してくれよという感じです。)
様々な経験をする中で学んだのは、何をするかは時に自分では決められなくても、その状況でどう在るかは常に自分次第だということです。
勝負に立ち向かうのが怖くて、逃げ出したいと思ったことも何度かありました。でも自分のプレーする姿を楽しみにしている人がいて、応援してくれる人がいて、その人たちに対してやれるだけやりましたと胸を張って言える人間でありたい。結果どうこうの前に、支えてくれる人への責任を果たしたいと考えるようになりました。自分が好きで始め、続けてきた野球でしたが、自分だけのものではないんだなということにようやく気付きました。
最上級生となりチームの意思決定に関わるようになりました。選手としては何の実績もなく下の下でしたが、それまで本当に恵まれた環境で野球をしてきたからこそ、チームに所属する人間はもちろん、自分たちがプレーするために支援、応援してくださる方をはじめこの環境を作り上げてくださった全ての方に対して、誠実でありたいと思いました。周りからどう見えていたかは分かりませんが、個人として、組織としてのあるべき姿を考え、行動してきたつもりです。うまくできたとは到底思えません。結局裏方と呼ばれる人たちに大きな負担をかけてしまっていたように思い、非常に申し訳なく感じています。
つい先日の勝利をスタンドから眺め、改めて勝つということの大きさを感じました。結局東大野球部に1番求められているのは勝つことなんだと思います。今となっては自分が考え、大事にしようと思ってきたことは果たしてこのチームに必要だったのか自信はありません。ただ本当に率直に今の自分の気持ちを言うならば、様々な思いを抱えながら毎日球場に来る同期や後輩の姿が何よりも尊いと心の底から思います。
元々かなり利己的な性格で、チームが勝っても自分が活躍できなければつまらないと感じるタイプでした。野球なんかもう相当向いてなかったと思いますし、今でも一選手として根底の部分ではそんなに変わっていない気がします。神宮球場の、東京六大学のマウンドに立つために2年間の浪人をし、それまでほぼ未経験だった投手に挑戦し3年間を費やしました。この短いとは言えない月日が思い入れを強くしすぎてしまったのかも知れません。正直今はどんなに劣勢の試合展開でも投げられるだけで嬉しくて、なんならもうベンチにいるだけで楽しくて、だから最後のシーズンここまで全く出番がない現状にはうまく気持ちの整理をつけられずにいます。勝ちに向かって一丸となるべきチームの中でこんな奴がいて良いのだろうかとすら思います。
真剣に野球と向き合う最後の最後になってまでこんなに色んなことを考えさせられるとは思ってもいませんでした。しかし自分にとって野球だったからこそこんなに多くの感情を経験できたのだろうとも思います。そしてなにより、色んなことに迷いながら、野球自体を嫌いになったことは一度もありませんでした。好きなことを好きなまま続けてこられた。こんなに幸せなことは無いと思います。
野球で飯を食う人間にはなれませんでした。自分がここまで野球を続けてきたことがこの先の人生で直接役に立つことはないと思います。それでも一選手として何かを残そうとしたこの4年間は、自分にとって何にも代え難い価値のあるものだったと胸を張って言えます。そして願わくばこの東大野球部という場所が僕のように小さな挑戦をする者を受け入れる場所であり続けてほしいです。
野球を始めてからの16年間で多くの人に出会いました。チームメイトやマネージャーをはじめ、監督、コーチ、顧問の先生方、トレーナーの方々、理学療法士の先生、大会運営に携わる方々、応援部の皆様、ファンの方々、友人。ここには書ききれないほどのたくさんの方々のおかげでこれまで野球を続けることができました。本当に深く感謝しています。ありがとうございました。そしてなにより家族には、また学生野球生活が終わったときに直接自分の口から感謝を伝えたいと思っています。今はとにかく最後まで戦い続けます。
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次回は9/22(木)、齊藤投手を予定しております。
お楽しみに!