《僕の野球人生》 Vol.1 青木 麟太郎 投手
本日より4年生特集、《僕の野球人生》が始まります。
この企画では、ラストシーズンを迎えた4年生に1人ずつ、今までの野球人生を振り返ってもらいます。
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《僕の野球人生》 Vol.1 青木 麟太郎 投手 (4年/筑波大駒場)
東大野球部での日々は、毎日が新鮮で、新たな発見と楽しさのおかげで、とてもエブリデイでした。今まで自分が経験してきた野球とは、全く別の野球がそこにはありました。レベルの違いに、最初は戸惑いながらも、スポンジのように多くのことを吸収しました。“ケツとお腹を入れる”や“捻転差”などといった形而上の言葉を覚えたのもこの頃でした。練習が終わると、何か新しい情報はないかとインターネットや本にかじりつき、次の日には同期にプレゼンをする、そんな日々を過ごしました。「これで球速が5キロアップする!」そう話しながら、キャッチボールに向かいましたが、実際には球が速くなることはなく、ただ野球を楽しむだけの下級生時代でした。
2年生の春のフレッシュリーグではじめて神宮球場のマウンドに立つことができました。ぼくはとても緊張しいだったので、試合であがってしまうことは必至でした。ちょうどそのとき、たまたま卓球の水谷選手が、緊張緩和のために試合ではパンツを履かないということを知り、試してみることにしました。結果はホームランを打たれた後に、2連続でフォアボールを出してしまいました。付け焼き刃のノーパン投法が成功することはありませんでした。そもそもケアしなくてはいけない球の数を増やしてしまった時点でぼくの負けでした。2年生の頃は、多くの実戦機会をいただきましたが、あまり結果を残すことはできませんでした。この頃から同期がリーグ戦で活躍するようになりました。スタンドから見える同期は、遠近法の関係でとても小さかったですが、その背中はとても大きく見えました。
3年生になって、流石にこのままではやばいと感じ、全力でオープン戦に臨みましたが、ぼくは抑えることができませんでした。自分では頑張っているつもりでも、他のチームメイトにとっては当たり前のことでした。夜の10時になっても球場の明かりがついていることを知りませんでした。尊敬する先輩が毎日地道に積み上げていることを知りませんでした。ぼくがベッドの上でエンタの神様を見ていたとき、みんなは練習していました。ぼくはスタートラインにすら立てていないことにようやく気がつきました。さまざまなことを試しました。曲がりの鋭い大きなスライダーがあれば、抑えられるのではないかと思い、腕を下げてサイドスロー気味にしたこともありました。しかし、スライダー以外は今まで通りのフォームで投げていたので、球種がバレて打たれてしまいました。思い出せないくらい多くのことを試しましたが、大きく飛躍することはできませんでした。いい感覚を得て、上向きそうになってもすぐにわからなくなってしまう、もどかしさに苦しみました。ぼくが気付かない間に、誰かにばらばらに分解されて、大急ぎで組み立てられたみたいな感じでした。ただ嬉しい出来事もあり、高校時代にバッテリーを組んでいた酒井太幹(2年/学生コーチ/筑波大駒場)と、大学でまたバッテリーを組むことができました。
4年生はあっという間でした。
「クリームの入ったバケツに2匹のネズミが落ちました。1匹目のネズミは、すぐに諦めて、溺れて死んでしまいました。2匹目のネズミは、諦めずにもがき続けました。必死にもがき続けた結果、やがてクリームはバターになり、生き残ることができました。」
この話はぼくの好きな映画のワンシーンで語られたもので、ぼくも2匹目のネズミのようにもがき続けよう、そう決意して東大野球部に入部しました。しかし、入部当初に思い描いていた自分の姿にはなれませんでした。なりたい理想の自分と現実とのギャップに苦しみ、やめてしまおうかと思ったこともありました。そんな時に支えとなったのは、チームメイトであり、そして家族の存在でした。母は、小学生の頃から誰よりも大きい声で応援してくれました。恥ずかしいと思うことも多々ありましたが、大事な場面で力を出せたのは間違いなく、母のおかげでした。父には自分からはなかなか連絡しない気難しい息子でしたが、どこからか情報を集めて、いつも激励してくれました。褒められることが嬉しくて、もっと上手くなろうと思う原動力でした。そして、大学野球を一番応援してくれていたのは祖父でした。ほぼ全ての試合を見にきてくれて、いつの間にか東大野球部オタクになってしまいました。リーグ戦で投げる姿をじじに見て欲しいという思いで、最後までもがき続けることができました。他にも、高校時代にとてもお世話になり、東大野球部に入るための背中を押してくれた朝木監督や馬見塚先生、試合を見にきてくれた友人たちなど名前をあげればキリがないほど多くに人に支えてもらいました。本当にありがとうございました。
最後に、これまで東大野球部を支えてくださった全ての人への感謝を述べて終わりとさせていただきます。
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次回は明日9/20(水)、大越遥平投手を予定しております。
ぜひご覧ください。