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主将 印出 太一
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【Weekly MGR】vol.127

ブログをご覧の皆さんこんにちは。
4年マネージャーの中原由信(政経・早稲田実)です。

今年ももう12月となりましたが、年末のご予定は立てられましたでしょうか。
時間が限られていればいるほど、自分がやりたいことすべてが出来るわけではなくなっていき、出来ないことも増えていきます。経済学ではこういった考えを「機会費用」と呼んだりしますが、案外大切な考え方です。

私がスマホを眺めていた2時間。その2時間、コンビニでバイトすることも出来たわけですから、約2000円の損とも言えます。あるいは、2時間バイトをしたとして、金銭的には約2000円得しているわけですが、もしその時間を勉強に充てていたら得られたはずの知識を損失したとも考えられます。「何をするか」決めるということは、同時に「何をしないか」決めるということでもあるんですね。

皆さんも、「何をしないか」にも気をかけて、2024年残りの1か月を充実したものにしていただければと存じます。くれぐれも、お体にはお気を付けください。体調を崩してしまうのは、経済学うんぬんではなく、普通にただの損です。
私もあと4ヶ月で社会人ですから、何でも楽しんでやるぞという活力と、物事に的確な優先順位をつける落ち着きをバランスよく心に持って、残りの大学生活を満喫できればと思っています。

 

完全に引退しきったOBのような出だしを書いてしまいましたが、今回は、11/20~11/25にかけて行われた、第五十五回記念明治神宮野球大会の振り返りを行いたいと思います。11/12(火)、弊部は明大との優勝決定戦を制し、日本一を目指す権利を再び獲得しました。弊部の初戦は11/23(土)の対環太平洋大学。試合の注目シーンをピックアップしながら振り返ります。このブログをお読みいただいているほとんどの方は、私たちの戦いを隅々まで鮮明に覚えていることかと思いますが、チーム印出最後の勝負を共に振り返りましょう。

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第五十五回記念 明治神宮野球大会
11/23(土) 大学の部 第1試合
2回戦 対 環太平洋大学(IPU)
スターティングメンバー
1.(中)尾瀬雄大 24
2.(遊)山縣秀 2
3.(右)吉納翼 1
4.(捕)印出太一 10
5.(一)前田健伸 3
6.(三)小澤周平 4
7.(二)中村敢晴 8
8.(左)石郷岡大成 29
9.(投)伊藤樹 11

早稲田にとって神宮大会初戦となる2回戦、相手は中国・四国三連盟代表 環太平洋大学。今年のドラフト会議で東北楽天ゴールデンイーグルスに2位指名を受けた左の本格派エース德山一翔選手を筆頭に、切れ目のない打線と併せてここまで勝ち上がってきた強豪校です。対する早稲田も、優勝決定戦と同じオーダーで真っ向からぶつかります。

ベンチには、副務の神田航(4年・文・早大学院)が入りました。主務が入る大学も多いですが、全日本大学野球選手権で私が入ったこともあり、本大会は神田に任せました。肩書の違いはありますが、上下は全くありません。春夏のキャンプも、リーグ戦のスコアラーも、そうやって役割を担いあって、二人でチームを見守ってきました。IMG_8242(神田)

また、この試合の場内アナウンスには、本大会を運営側から支える藤田南(4年・マネ・人間・開智)が入りました。早稲田大学野球部初の女子マネージャーとして、神宮に初めて早大野球部員のアナウンスを響かせた彼女。偏った個人の意見ですが、アナウンスの上手な六大学女子マネージャーばかりの中でも、彼女の声が神宮球場に一番似合います。

【1回】
1回の表、德山投手と同じく楽天にドラフト指名を受けた吉納翼(4年・外・スポ・東邦)が二死から二塁打を放ちます。未来のチームメイトからのあいさつ代わりの長打でチャンスを作りますが、無得点に終わります。
どんなピッチャーからも「自分の打球」が放てるのが吉納の強みです。プロに入ってから対戦する投手は誰もが超一流だとは思いますが、これまで見せてくれた以上の輝きを見せてくれることを期待しています。S__115056662(吉納)

その裏、先発の伊藤樹(3年・投・スポ・仙台育英)は先頭打者に二塁打を浴びて早くもピンチを作ってしまいます。
3番にも右安を許し一死1,3塁としますが、後続を抑えてこちらも無失点に切り抜けます。IMG_8556(伊藤樹)

【3回】
3回、早稲田が三者凡退で攻撃を終えてしまったその裏、再びピンチが訪れます。中安で出した先頭打者は印出太一(4年・捕・スポ・中京大中京)の強肩ですぐさま刺殺しますが、その後3者連続の出塁を許し、一死にして塁を埋められてしまいます。先制失点のピンチを救ったのは4年生でした。二遊間に飛んだあたりを山縣秀(4年・内・商・早大学院)が捕球しセカンドでフォースアウトを取ると、トスを受け取った中村敢晴(4年・内・スポ・筑陽学園)が素早く1塁に転送。最高の形でダブルプレーを取り、試合の流れを渡しません。
守備面での「隙のなさ」「粘り強さ」は、印出主将が作り上げるチームの一つのテーマでもありました。いかにして確実にアウトを積み重ね、進塁・生還を阻止するか。失点のピンチを命からがら脱出するシーンはリーグ戦でも幾度となく見られましたが、個人的には、打線が爆発しているときよりも「強い早稲田」を実感できる最高の瞬間です。IMG_8668(印出)IMG_8527(山縣)IMG_8042(中村敢)

【中盤】
4回には8番石郷岡大成(3年・外・社会・早稲田実)のヒット、5回には5番前田健伸(3年・内・商・大阪桐蔭)のヒット、6回には小澤周平(3年・内・スポ・健大高崎)のヒットと、早稲田は3年生が毎回安打を放ちながら毎回得点圏にランナーを進めます。が、あと1本が出ず、先制点を奪えません。非常に歯がゆい思いでしたが、特筆すべきは、前田の活躍です。この試合を通して唯一の3出塁を果たし、3度の好機を演出しました。少し物足りなさを感じた春から夏を経て、まさに覚醒を遂げた前田。早稲田の中軸に相応しい強打者へと成長したことを、この秋私たちの目の前で証明してくれました。来年も間違いなく打線の中心を担いますが、ゆっくりとダイヤモンドを回る彼の姿が今から楽しみです。
IMG_8209(石郷岡)IMG_8436(前田健)IMG_8453(小澤)

予想以上に攻め込まれていた伊藤も徐々に落ち着きを取り戻します。4回から毎回奪三振を記録し、彼本来の支配的投球でチームを勢いづけます。
私は伊藤の奪三振が大の好物で、特に左打者に投げ込むフロントドア気味のストレートは映像だけで白飯が食べられるほどです。最近の私は、社会人を迎えるにあたって生活費に対する不安が拭えずにいましたが、ちょうど昨日、BIG6TVの公式Xから伊藤の奪三振がまとまった動画が投稿されました。食費に関してはしばらく困らなさそうで、安心しています。IMG_8030(伊藤樹)

【9回】
残念なことに、德山投手の投球も火を噴き続けます。何とか食らいつきたい早稲田打線ですが、7回以降は2塁すら踏ませてもらえず、通常ルール9イニングでの無得点を喫します。

何としてでもタイブレークに持ち込みたい9回裏、先頭打者がはじき返した打球は二遊間に飛びます。普通ならセンターに転がっていく打球でしたが、ご存じの通り早稲田のショートは普通ではありません。山縣は無駄のないチャージで打球に追いつくと、体を一回転させながら最速でストライク送球をファーストに投げ込みます。バックに盛り立てられた伊藤は続く6番、7番を2者連続三振に切って取り、良い流れで10回表の攻撃へとつなげます。
傲慢極まりないですが、リーグ戦途中から感覚が麻痺しており、「山縣の守備に驚かされる」という経験がみるみる減っていきました。どんなに理不尽な打球でも、その打球がショート方向であれば「アウトにしてくれるかも」と先に思うようになってしまったのです。それほど彼の守備範囲と確実性は異次元であり、誰にも真似できないアイデンティティです。

 

【10回】
10回から大会規定によりタイブレークが適用され、無死1,2塁からのスタートとなりました。
最低でも1点を取りたい早稲田は、1番尾瀬雄大(3年・外・スポ・帝京)の進塁打で一死2,3塁とすると、2番山縣の犠飛により先制に成功します。神宮の寒空に遂にいつもの紺碧が流れました。2つアウトを取られながらも、そのぶんランナーを二つ進塁させる。無理やり厳しい言い方をすれば「最低限」の結果かもしれませんが、どんな状況でも最低限以上の結果を出してくれるのが今年の1,2番です。極限まで研ぎ澄まされた集中力とバットコントロールに脱帽します。IMG_8740(尾瀬)IMG_8772(山縣)

先制後は德山投手の魂のピッチングで最少失点に切り抜けられますが、遂に1点リードで迎えた10回裏。マウンドには絶対的エースの伊藤樹が上がり続けます。先頭打者に犠打を決められ一死2,3塁とすると、次の打者に死球を与え満塁としてしまいます。一打同点あるいは逆転という絶体絶命のピンチで対するはこの日好調の1番打者。2球で追い込みますが、少し浮いた3球目の変化球をはじき返され同点に。猛打賞となる3本目のヒットを許してしまいます。最後は、2番打者のインローに投げ込んだスライダーが引っ掛かり、3塁ランナーが生還。サヨナラ負けを喫しました。
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以上になります。
ご覧いただいた通り、弊部は2回戦敗退に終わりました。応援いただいた皆様、本当にありがとうございました。また、日本一という悲願を達成できず、申し訳ございません。高校の部優勝は横浜高校、大学の部優勝は青山学院大学となり、今年の明治神宮野球大会は幕を閉じました。
青山学院大学は今年、東都大学野球連盟での春秋連覇、全日本大学野球選手権での優勝と併せて4冠を成し遂げています。悔しいですが、とんでもない偉業です。日々の鍛錬を怠らなかった部員一人ひとりの力、ちょっとやそっとの綻びでは全く揺るがないチーム力に最大級の賛辞を送ります。同時に、この時代に4冠が可能であると示してくれたことに感謝の意を表します。来年は必ず、今年より強い早稲田がその座を狙います。

 

これで、印出を主将に据えた体制は終了し、114代は引退となります。私がブログを書くことももう無く、寂しい思いです。野球部での4年間は、本当にあっという間でした。入部した日のことも鮮明に思い出すことが出来ます。あの日から私たち114代の日々は始まり、そこから1300日あまりの時を過ごしました。

入部から半年後、私はマネージャーへの転身を決意し、選手として神宮で活躍する未来を諦めました。今となっては、選手を続けていても活躍の可能性は低かったと言えます。有り余る才能を持ちながらも苦悩と努力を重ね、その末に結果を出し続けるまぶしい先輩や同期、後輩をこの目で見てきたからです。当時の私も決意こそ固かったものの、自らの野球センスにそこそこの自信を持ってしまっていたため、胸の奥では一丁前に未練を引きずっていました。
ですから、マネージャーになってからもよく、神宮で打席に立ってヒットを打つ夢を見ました。夢から目覚めた時は恥ずかしい思いをしますが、そのたびに「引退した時に、『マネージャーになってよかった』と心の底から言えるように頑張ろう」とも思いました。

マネージャーとして成長していく過程では、きついこともたくさんありました。初歩的なミスや勘違いを何度も起こして、自分の不甲斐なさに情けなくなりました。呆れずに何度も指導・フォローしてくださった先輩方には頭が上がりません。

ひとつ上の代が引退して私が主務に就任した頃には、夢の中の私は全く打席に立たなくなっていました。その代わり夢の中の私は、学ランと学帽を着け、手にはスコアシートを持ってベンチに立つようになりました。
場面はいつも緊迫した最終盤。夢なので結末はいつもすぐ忘れてしまうのですが、2度だけ、たった2度だけ、優勝の瞬間まで鮮明に見届けて起きた日がありました。「正夢になるといいなあ」と思いながら、その二日間はいつもより少しだけ姿勢を正して生活していたのを思い出します。

二日とも、正夢になりました。選手たちが、正夢にしてくれました。
早稲田最後の優勝は2020秋。優勝を経験せずに卒業してしまうかもしれないという崖っぷちから、主将の印出や新人監督の川内脩平(4年・学コ・スポ・八王子)を中心にチームを作り上げました。結果として、9年ぶりの春秋連覇を達成。「強い早稲田」を、何とか繋ぐことが出来ました。これはひとえに、天皇杯をつかみ取った野球部員のみならず、早稲田大学野球部を絶えず応援し続けてくださった皆様のお陰です。
私は、チームのみんなの努力や皆様の支えがあって、優勝校の主務となり、天皇杯を賜り、パレードも歩くことが出来ました。私ほど幸運な大学生はいません。恵まれた側が言っていいことなのか分かりませんが、これ以上なく周りの人々に恵まれたラストイヤーでした。

4年前のあの日、私はキラキラした大学生活を「送らない」ことを決めました。そしてその後すぐに、野球選手として「活動しない」ことも決めました。そこからも様々な選択を経て、中にはいくつものミスもあって、今の私があります。しかしながら、「早稲田大学野球部でマネージャーを務める」「野球部の日本一に全てを捧げる」という選択だけは、絶対に正しかったと自信を持って言えます。野球部の仲間や、六大学のマネージャーと共に過ごしたこの4年間は、何にも代えられない財産となっています。
小さい頃私は「孤高の天才」に憧れていましたが、本当は「寂しがり屋の無能」という、対義語みたいな人間であることにマネージャーになってから気づきました。しかし、こんな人間だったからこそ、たくさんの人に出会うことができ、たくさんの貴重な経験が出来たのだと思っています。社交辞令ではなく、私と関わってくださったすべての人に感謝していますし、交わした会話も忘れることはありません。よく驚かれますが、些細な会話でも本当に覚えているので、安心(安心?)してください。

1年間、チーム印出を応援してくださった皆様、ありがとうございました。弊部はこれから、間違いなく更に強くなります。これからも、早稲田大学野球部を何卒、宜しくお願いいたします。
また、東京六大学野球連盟は来年で100周年を迎えます。早稲田だけでなく、六大学全体が、大学野球全体がもっともっと盛り上がっていきます。引き続き、応援いただけますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回の担当は北嶋マネージャーです。本日行われた全早明野球戦常陸大宮大会を振り返ります。チーム印出の最後の勇姿を届けてくれるはずです。お楽しみに。
LINE_ALBUM_引退_241126_1(4年生の集合写真)

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