明治神宮大会 関西大学戦振り返り
こんにちは。
某日に行われた納会を以って野球部を引退した岡林です。
「始まりがあれば終わりもある」ということで、このブログも僕が担当するのは最後になりました。
ただ、その最後を華やかに締めたい。 中国古代の詩集『詩経』にこんな記述があります。「初め有らざるなし、克(よ)く終わることは鮮(すくな)し」
これは、中国の春秋時代初期、衰退していく周王朝のことについた述べたものであります。何にしても“初め”はありますが、最後まで全うすることは少ないと、 歴史が教えてくれます。
まさしく、これが現代でよく耳にする“有終の美”の語源なのですが、「克く終わる」すなわち、明治神宮大会で優勝して日本一でチームを終えることは本当に難しい。
そんな日本一の栄冠を掴む千載一遇のチャンスが訪れた明治神宮大会決勝の試合の振り返りを行なってまいります。 (だいぶ時間が経っております。遅くなり申し訳ございませんでした)
決勝戦は初回に郡司の先制弾で2点を先制するも、そこからは投手戦モードに入 り、先発の髙橋佑は七回までパーフェクトの好投を演じます。沈黙を破ったのは 八回表、下⼭、柳町でチャンスを作り、またも郡司が適時打でランナーを返し、 その後も瀬⼾⻄が適時三塁打を放つなどで4点を追加、さらには九回表、二死から 柳町、郡司と続いて打席に立った渡部遼がダメ押しの2点を追加し、最後も先発髙橋佑が抑え、完封。快勝で日本一の栄冠を制しました。
初回の攻撃、先頭の中村健が三振で倒れた後、2番・下山が鮮やかに中前に運んで出塁します。柳町が三振で倒れ、二死となり、打席に入るは主将、郡司。打った瞬間、大歓声が湧き上がる打球は、勢いの衰えないままレフトスタンド中段に入り、2点を先制。前の試合の中村健に引き続き、初回から主将の一振りで先制点を奪います。その後の正⽊は右飛に倒れ、2点のまま攻撃を終えます。
<先制の2点本塁打を放った郡司>
裏の守り。先発はやはりこの男。今年一年、エースとしての役割を果たしてきた髙橋佑がマウンドに登ります。その髙橋佑は抜群のコントロールと大きく曲がる変化球を武器にしっかり3人を打ち取り、上々の立ち上がりを見せます。
二回表の攻撃。先頭の⼩原が倒れた後、7番・綿引はフルカウントからボールを選び、出塁します。すぐさま瀬戸⻄が一塁側にバントで転がし、二死二塁から打撃も光る髙橋佑を迎えます。その髙橋佑でしたが、厳しいコーナーを攻められ、あ えなく三振してしまい、スリーアウト。無得点でこの回を終えます。
裏の守り。この回も髙橋佑の好投が冴え渡ります。相手の攻撃は4番から始まる好打順でしたが、先頭の野口選手を遊ゴロ、続く吉川選手(僕の後輩です。)を三振、最後は久保田選手を中飛に取り、三者凡退でベンチに帰ります。
三回表の攻撃。打順は1番に帰り、好調の中村健が打席に入ります。捉えたかと思えた打球は空高く舞い上がり、上空の風に大きく戻され、レフトのクラブに収まります。その後、下山は三振、柳町も相手のサードの好守備に阻まれスリーアウト。早々と攻撃を終えてしまいます。
流れを渡していけない大事な裏の守りでしたが、ここで髙橋佑が圧巻の投球を見 せます。先頭の7番・倉川選手を変化球で三振にとり、続く坂之下選手を遊ゴ ロ、最後は森選手を変化球で三振に切り、三回までパーフェクトの投球を見せます。
四回表、髙橋佑の好投に奮起したいところでしたが、先頭の郡司はセカンド坂之下選手の好守に阻まれ、続く正木も遊飛に倒れます。二死から7番・小原のショー トへの打球がエラーを誘い出塁しますが、続く綿引の鋭い打球は不運にもサード正面のライナー。追加点に及びませんでした。
相手の打線が二巡目を迎える裏の守り。しかし、髙橋佑は好投を続けます。先頭の安藤選手を二ゴロ、2番・関本選手をチェンジアップで三振に取り(このチェンジアップはカナダ遠征の時にカナダの選手から持ち帰ったものだそうです。その時の通訳がブログ班の⻄山)、最後は上神選手を二ゴロに抑え、この回も1人の出塁を許しません。
試合開始から1時間も経たないまま迎えた五回の攻撃。一死から好投の髙橋佑が四球で出塁すると、続く中村健のセカンドへの緩い打球が進塁打となり、スコアリングポジションに走者を置いて下山を迎えます。その下山の打球は良い当りでしたが、センター正面のライナー。容易には追加点を取らせてくれません。
その裏の守り。先頭の4番・野口選手を三振に取ると、続く吉川選手を二ゴロ、最後も三振に取りますが、これを郡司が後逸、しかしここで珍プレー発生。神宮球場のバックネットが慶應の味方をし、転がったボールはノーバウンドで郡司の元にはね返り、一塁へ転送。判定はアウト。まさに豪運。この回もパーフェクト投球を続けます。
グラウンド整備を挟み、折り返しの六回表。慶應の攻撃は3番・柳町から始まる好打順。しかし、相手先発森投手の好投を前に、三者凡退。早々と攻撃を終えてしまいます。
その裏の守り。髙橋佑の冴え渡る投球は、相手打者に対し、2球で追い込んで最後は打ち取るというテンポの良さで、この回もパーフェクトで守りを終えます。
若き血⻫唱を行う七回表、先頭の小原の三遊間へのゴロがまたも相手の送球ミスを誘い、無死から出塁します。続く綿引がバントを決めきれず捕邪飛に倒れた後、8番・瀬戶⻄がショート頭を超える鮮やかな中安でチャンスを広げます。続く髙橋佑が緩い一ゴロで走者を進め、追加点のチャンスで中村を迎えますが、二飛に倒れ、攻撃を終えます。
スタンドからは完全試合を期待する声がちらほらと上がる中、相手打線が3巡目を迎える七回裏の守り。一死から2番・関本選手の鋭い当りにスタンド一同が悲鳴を上げるも風に戻されレフト正木がキャッチ。安堵の息に変わります。その後もしっかり3 番・上神選手を二ゴロに抑え、この回も三者凡退。
<7回まで一人の走者も許さなかった髙橋佑>
八回表の攻撃。先頭の下山の打球がセンターを抜けるかのところをショートの野口選手が横っ飛びでキャッチ。しかし、下山の方が早くに一塁に到達。しっかりと先頭が出塁してクリーンナップに繋ぎます。3番・柳町の打球は二遊間を破り、 一、二塁とし、郡司を迎えるところで相手先発・森投手はマウンドを降りて肥後投手がマウンドに登ります。郡司への4球目が暴投となり、4球目、アウトサイド の変化球に食らいついた打球は右前に転がり、2人の走者が帰って待望の追加点。 2点を獲得します。続く、正木の打席に代打橋本典が入り、しっかりとボールを見極めて四球を選びます。その後、小原がきっちり送り、綿引が二ゴロで倒れ、二死二、三塁としたところで打席に入るのは今大会攻守共に光る瀬戸⻄。4球目を弾き返した打球は中越えの適時三塁打。さらに2点を追加して6点リードで八回裏の守りに入ります。打者の援護をもらった髙橋佑は八回もマウンドに登りますが、4番・野口選手、代打・原選手に連打を浴び、残念ながら完全試合を逃します。しかし、平常心を保った投球で続く久保田選手を遊併殺にとり、最後は三ゴロに仕留め、無失点で切り抜けます。ここまでの髙橋佑の好投が攻撃陣にも作用します。
<今大会で攻守にわたり大活躍を見せた瀬戸西>
九回表、二死から柳町が中前、郡司が四球でチャンスを作ると、続く渡部遼が追い込まれてから食らいついた打球はセンターへの適時打二塁打となり、ダメ押しの2点を追加します。その裏、大量の援護をもらった髙橋佑は最終回もマウンドに登ります。一死から代打・⻄川選手に中前を浴びますが、その後をしっかり抑え、最後はセンターの渡部遼がボールを掴んでゲームセット。
<マウンドで抱き合う郡司と髙橋佑樹>
<優勝を喜ぶ選手たち>
悲願の日本一を果たしました。慶應としては、エースが抑えて、主将が打つという最高の内容で勝つことができました。 それと同時に、この試合を以ってTEAM2019、TEAM郡司が終わりを迎えます。 ただ、全大学382大学の頂点に立って終わることにこれほど幸せなことはありません。思い返してみれば、このチームの始まりは、去年の悔しい敗戦からでした。 歴史的快挙である“3連覇”を目前にして逃してしまった、“あの”悔しさから始まりました。
下田グラウンドのスコアボードには、新チーム始動と同時に“あの日”のスコアが 刻まれ、臥薪嘗胆、いつでもあの悔しさを忘れずに練習してきました。 そして、年が明け、春の奄美キャンプ・関⻄遠征を経て迎えた春季リーグ。結果は勝ち点4。勝ち点を落としたのはたった一つでしたが、優勝は完全優勝の明治大学。明治大学はそのまま全日本大学野球選手権も優勝して日本一。私たちはその様子を、指をくわえて見るしかなかったことに、また悔しさを覚えました。明治戦で勝っていれば、あの場所にいたのは慶應だった。そんな悔しさを胸に、夏の北海道遠征、カナダ遠征を経て、投打ともに大幅にレベルアップして秋季リーグを迎えます。秋季リーグ戦は開幕9連勝の快進撃。気がつけばリーグ戦優勝を果たします。しかし、チームの宿命である「打倒・早稲田」を達成できなかったことに触れないわけにはいけません。やはり、リーグを締めくくる伝統の早慶戦で最後に勝ち点を奪えず91年ぶりの全勝優勝どころか完全優勝を逃したことは、画⻯点睛を欠いたと言わざるを得ません。早稲田を倒しての完全優勝あるいは全勝優勝は後輩の宿題として、必ずや達成して頂きたいものです。そして、エクストラステージといったものでしょうか。明治神宮大会でも、慶應の快進撃が続き、三試合で23得点、失点はわずかの1、という完璧な試合運びで見事悲願の日本一に輝くことができました。そして、今年限りでチームを退く大久保監督をようやく、「胴上げ」することができ、「退任」から「勇退」と呼ぶことができるようになりました。終わってみれば、チーム目標の「リーグ戦優勝・ 日本一・早稲田に勝つ」の三つのうち、達成したのは二つ。しかし、何といっても勝って終わることができたこと、これほど幸せなことはありません。
さらっと今年一年を振り返ってみましたが、引退する四年生は、自らの置かれている状況や立場から、よく「動き」、よく「働き」ました。チームの勝利のため に日々努力を重ね、結果を出してきた選手はもちろん、毎日様々な事務の仕事に追われるマネージャー陣(鈴村、永田、⻘山、後生川、原田)や毎日夜遅くまで相手チームの映像から癖や傾向を見抜いてきたデータ班(本岡、若原、大⻄駿、森田雄)、肩や肘が痛くとも毎日、慶應の打撃陣のためにボールを投げてきたバッテ ィングピッチャー班(森田雄、桑野)、そして下級生のフレッシュトーナメントを優勝に導いた宮田監督以下Bスタッフ陣(齋藤翔、⻲川、木村、田口怜、古市)、そし てリーグ戦メンバーを支えてきたAスタッフ陣(後藤、金澤、元木)など、まだまだ紹介しきれていませんが、四年生一人一人が日本一というパズルの1ピースとな っていたことに間違いはありません。それについてきてくれた後輩たち。誰も欠けてはいけない存在でした。
そして、来年も再来年もずっとずっと後輩たちにこの景色を味わって頂きたい。 つい先日、新幹部が発表されましたが、新監督堀井哲也監督のもと、新キャプテン瀬戸⻄がチームをしっかりと率いてくれるはずです。(神宮大会での打撃成績や守備での安定感をみれば安心です。)
最後になりますが、何でもよかった4年間を大学野球に選び、それに本気になって闘ってきたことは、とても貴重で掛け替えのない経験でした。大学野球にも挑戦させてくれ、このような経験をさせてくれた両親には感謝です。 大久保監督のもと、慶應野球部で四年間を過ごせたことはとても幸せなことで、 得たものは計り知れないほど大きなものです。 また、神宮に足を運べば、いつも大きな声援で華々しく応援してくださる応援指導部の方々や塾野球部ファンの方々は心強く、励まされました。 朝早くから練習をすることに対して、下田近隣住⺠の方々はそれでも温かく見守ってくださったことに感謝しかありません。 最後に、共に闘い、喜びや苦労を分かち合った仲間たちは大きな財産です。 こうした出会いに感謝し、その経験を私たち四年生は社会に出て生かし、どこかでまた活躍できるように精進してまいりますので、今後も温かくも見守っていただければ幸いです。
僭越ながら締めの言葉とさせていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。 新チームも引き続き、温かいご声援のほど、よろしくお願いいたします。
またどこかのメディアで、お会いしましょう。