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『僕の野球人生』vol.30 岩瀬 笑太 主務

4年生特集、『僕の野球人生』では、ラストシーズンを迎えた4年生に1人ずつ、今までの野球人生を振り返ってもらいます。

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「僕の野球人生」vol.30 岩瀬 笑太 主務(4年/マネージャー/開成)

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「東大野球部のマネージャーってどんなことをしているんですか?」

この3年間で自己紹介をしたあとに幾度となく聞かれたフレーズです。この問いに対して答えに詰まり、具体的な業務内容を羅列するだけの分かりにくい説明を何度も繰り返すたびに少しばかりの違和感を覚えていました。今回自分の野球人生を振り返る中で、この問いに対する自分なりの答えを改めて考えてみることにしました。最後まで読んでいただけたら幸いです。

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野球との出会いは自宅の寝室でした。母方の伯父に買ってもらったおもちゃのバットとボールで父親と野球ごっこをするのが楽しくて仕方ありませんでした。それもそのはず、この時期が野球人生でいちばんヒットを量産していたからです。

小学校に上がると、いろいろ考えた末に母親が勧めてくれた世田谷タイガースという硬式野球のクラブチームに入団しました。このチームは何年も連続で全国大会に出場するような強豪チームで、小学生とは思えないような体格・技術を持つチームメイトがたくさんいました。

そんな環境と熱心に指導してくださるコーチの皆さんのおかげで、レベルが上がってもずっと活きるような野球の基礎を徹底的に学ばせてもらうことになります。しかし振り返ってみると、真面目に練習に取り組んではいたものの、周りのみんなほど熱意をもって野球に向き合えていたわけではなく、どんどん上達していく仲間たちとの差は開く一方でした。そんな状況もあってか、多くのチームメイトがシニアやボーイズで硬式野球をもちろん継続するなか、自分は中学校の部活動で野球を続ける道を選ぶことになります。

中学受験で運よく開成に合格し、満を持して野球部に入部しました。蔵内先生に鍛えられたチームは自分の想像よりもよっぽど強いチームでした。そんな中でも小学生の頃の貯金もあり、1年生のうちから出場機会を多くいただくことができ、酸いも甘いも知りながら野球の楽しさを再認識できました。上級生になると人生で初めてチームの主力としてプレーすることとなり、自分の1つ1つのプレーがチームの勝敗に直結する楽しさと責任とをこのとき初めて実感しました。

中学の野球部を引退すると、ほどなくして高校の野球部に入部しました。軟式であるため校外の野球場でも練習できた中学時代と異なり、専用グラウンドもない高校の野球部では他の部活との兼ね合いもあり、グラウンドを使って全体練習ができる時間は週に多くて7-8時間程度しかありませんでした。そんな開成高校の青木監督の戦略はバッティングに特化し、徹底的に打ち勝つ野球でした。高校時代にノックを受けた記憶といえば、試合前のシートノックに限られるくらいです。そんなノンプレッシャーの青木野球は今までとは一味違った魅力がありました。

この高校時代には自分にとって大きな出会いがありました。内田開智(4年/内野手/開成)という野球少年との出会いです。自分でも言っていますが、彼は本当に野球が大好きで高校時代から暇さえあればひたすら練習していました。そんな彼に引っ張られて、みんなで朝も夜も自主練に励んだ日々は鮮明に思い出すことができます。なぜかは覚えていませんが、もともと小学生の頃から東大野球部に興味があった自分にとって、開智と一緒に東大野球部でプレーすることは疑いようのない目標になっていきました。

そして、また運よく東大に現役で合格して東大野球部の門を叩きました。練習に参加して、リーグ戦に出場している先輩方のレベルの高さと、受験明けで思うように身体も動かない自分との隔たりの大きさは途方もないものに感じたのを覚えています。

そう思ったのもつかの間、練習を始めて1か月も経たないうちに、全身麻酔の手術が必要なほどの大きな骨折をしてしまい、離脱を余儀なくされました。

入院とリハビリで何か月もチームを離れているうちに、チームはリーグ戦で64連敗を止める勝利を挙げ、同期はフレッシュで神宮デビューを果たしたり、オープン戦で実戦経験を積んだりしているのを目の当たりにして、どうしようもない無力感を覚えました。野球に対する情熱を完全に失ってしまった自分は野球部をやめようと本気で思っていました。

その思いを学生コーチとの面談の際に伝えたところ、高校時代からお世話になっている永田さん(R6卒)が様子のおかしさを察知し、親身になって話を何度も聞いてくださいました。結果として、もう1度プレーを続ける気にはなれませんでしたが、当時同期に1人もいなかったマネージャーとして部に残る決断を下しました。あのとき永田さんがいなければ、こんなに素晴らしい野球部での生活を送ることも、今この文章を書くこともできませんでした。本当にありがとうございました。

かくしてマネージャーになったわけですが、この仕事は自分に合っていたと思います。当初は右も左もわからなかった自分に平祐さん(R5卒)や石井さん(R6卒)をはじめとした先輩方からマネージャーのイロハを叩きこんでもらい、今日まで一瞬のようでしたが、同期の角能(4年/マネージャー/攻玉社)德田(4年/マネージャー/学芸大附)や後輩のみんなと一緒に何とかチームの運営を進めてくることができました。

詳しい内容を羅列することはしませんが、おふたりもぼくじん(平祐さん石井さん)でおっしゃっているように、マネージャーの仕事は華もなければ勝敗に直結することもないようなものが多いです。ではなぜ私たちはそのような仕事に取り組むことができているのでしょうか。

答えは毎日懸命に努力を続ける部員たちの活躍を、その結果としてのチームの勝利を、心の底から信じているから。そして同じ思いで東大野球部を応援してくださっている方々がたくさんいることを知っているからだと思います。

部員とひとくちに言ってもさまざまな人がいます。少しでも野球が上手くなるために日々鍛錬に励む選手。練習で少しでも選手が上達するように、試合で少しでも勝利に近づくようにグラウンドで舵取りをする学生コーチ。少しでも相手攻略の糸口をつかむために、昼夜を問わずデータと格闘しているアナリスト。そのみんなの頑張りと勝ちたいという強い思いを私たちは知っています。

東大の勝利を信じて、毎試合応援席で懸命に声援を送ってくれる人。遠く離れた地からでも中継を見ながら応援してくれる人。勝利を挙げるといち早く祝福のメッセージを届けてくれる人。そんな人がたくさんいることを私たちは知っています。

それを知っているからこそ、どんなに些細で地味な仕事であってもチームのためになるのであればがんばることができるのだと思います。

冒頭の問いの答え合わせです。「仲間の活躍を、チームの勝利を心から信じ、チームのためにできる最高の準備を整えること」が東大野球部マネージャーとしての私の使命だったのだと思います。

その使命を私がどれだけ果たせたのかは自分ではわかりませんが、幸いなことにみんなの活躍によって、この秋7年ぶりのシーズン2勝という記録が刻まれました。ただ、未だにこの4年間で1度も勝ち点がとれていない状況は変化していません。

残すは立教戦のみとなりましたが、いつも通り準備をして、いつも通りのプレーを続けていれば、今度こそ2勝して勝ち点を挙げられると思っています。東大野球部員としての生活もあと数日、私にできることは最後の試合のゲームセットの瞬間が歓喜に満ちたものであると信じて、最後まで自分にできる準備を全うするだけです。

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応援部のみなさんへ

自分が先に述べたような東大野球部の勝利を信じてくれている人たち、その筆頭が応援部の皆さんです。リードした展開でもどんなに点差がついた劣勢でも、変わらず笑顔で応援してくださる皆さんは1番の味方です。4年間本当にありがとうございました。そして残す数試合も力を貸してください。

 

角能、德田へ

いい意味で近すぎず遠すぎず、ほどほどの距離感でここまでやってきた我々は最高のチームだったと思います。それぞれが自分の役割をきちんと果たすことで、最高の準備をここまで続けてこれました。最後までみんなで力を合わせてがんばりましょう。そして引退したら1回くらいは3人でご飯に行きましょう(笑)

 

後輩マネージャーのみんなへ

伝えておきたいことは1つだけ。東大野球部の活動がどれだけ多くの方々のご尽力によって支えられているのか、身をもって知ることができるのはマネージャーのみんなの特権だと思っています。そんな皆さんに対する感謝の気持ちを、今まで通り部員を代表して伝えることをどうか忘れることのないようにしてください。そうすれば自然と応援してくださる人がこれからもずっと増えていくはずです。

 

門池(4年/学生コーチ/都立富士)

事務の舵取りをする主務とグラウンドの舵取りをする学生コーチとの連携は、部を運営していくうえで非常に重要だと思っているのですが、振り返ってみると門池がチーフコーチで本当にやりやすかったです。思ったことはズバズバ指摘してくれるし、視野が広く私が見通せていないところまで見えているし本当に助かりました。ありがとう。

 

すぐる(酒井捷外野手/3年/仙台二)小村(2年/内野手/私立武蔵)

君たちは入寮するやいなや、私になついてきてくれて日々の生活が本当に楽しかったです。そんな君たちがスタメンとして躍動している姿をみられることがとてもとても嬉しいです。今度の試合も君たちの活躍が不可欠です。最後まで私を楽しませてくれることを期待しています。

 

同期のみんなへ

改まって言うことも特にありませんが、強いて言えばこの正論マシンをうまく取り扱ってくれてありがとうございました。個性派揃いでずっと一緒にいても全く飽きない居心地のいい空間でした。引退してもずっと仲良くしてね。

 

六大学のマネージャーのみんなへ

今まで野球にかかわってきた中で、チームメイト以外にこんなに素敵な仲間たちと出会えるとは想像もしていませんでした。各大学は100年前から良きライバルであり、良き仲間たちであるという伝統を身をもって体感することができました。特に同期のみんなは引退しても変わらず飲みに誘ってほしいです。

 

六大学にいるタイガースの後輩のみんなへ

明治大学の三輪拓未、早稲田大学の國光廣太・細谷俊輔、法政大学の慶野壮司(もし他にもいたらごめんなさい)。ヘタクソだった私のことなんか覚えていないやつもいるかもしれませんが、陰ながら応援しています。本当にがんばってください。

 

両親へ

今まで伝えたことは少なかったけど、私が野球にずっと携わるために、時間も労力もお金もあらゆるものを私に捧げてくれて本当にありがとうございました。たまに家に帰って3人でご飯を食べる何気ない時間に救われることもありました。引退して家に戻ったら、また改めて感謝の気持ちを伝えさせてください。最終戦も東大野球部の勝利を信じて、応援よろしくお願いします。

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次回は10月25日(金)最終回、藤田峻也主将を予定しております。