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『僕の野球人生』第24回 月原大喜外野手

『僕の野球人生』第24回

月原 大喜 外野手 (4年/県立川越)

R40416vsM1 (255)R3.03.24vs安田学園高 (33)_DSC0951僕が東大野球部を意識したのは小学5年の時です。所属していたリトルの新井コーチに東大に入って野球をやりなさいと言われたのを覚えています。当時の僕は何を言っているのかわかりませんでしたが、運良くそのお言葉が記憶に残っていたため、その後東大を目指すきっかけとなってくれました。

高校までの僕の野球人生をひとことで表すと、惰性です。惰性で野球を続けてきました。中学でシニアリーグに入ったのも、決して高いレベルでやりたいからではなく、リトル上がりはシニアへ行くという流れがあったからです。小1から始めた野球ですが、万年外野手だった僕が野球の主人公であることはありませんでした。投げるのが苦手だった僕はピッチャーを任されることもなく、かといって体も小さく身体能力も高くないので、野球人生のどの時期をとってもほとんどがモブキャラでした。年を重ねるごとに、楽しくて野球をする周りと、なんとなく野球をする自分との違いに気づき始め、野球への執着はなくなって行き、とうとう高校の時に野球を一度やめました。人生で初めて野球から離れました。初めはちょっとした解放感などもありましたが、少ししたら急に今まで感じたことのない野球をやりたい衝動が出始めました。やめなければよかった。人生で最大の後悔です。この衝動と共に、新井コーチの言葉を思い出し、東大野球部に入るために必死に勉強しました。

 

こうして始まった大学野球は、辛いことの方が多かったのですが、一度も部活をやめようと思ったことはありませんでした。部員一人一人が、自ら情報収集をして明確な目標を持ちそのための手段として意味のある練習を毎日する。当たり前のことだと笑われるかもしれませんが、これだけ頭を使って真剣に野球に向き合う環境は初めてでした。そしてこの最高の環境で、ほんの少しずつでも野球が上達していく過程で感じる新たな野球の楽しさを知りました。それを最も象徴するプレーを1つ紹介します。それはつい先日の練習でのシートノックです。レフトからバックホームでランナーを捕殺しました。送球難だった僕のシートノックでの送球は元々、毎度地を這うようなゴロやカットマンの身長の2倍くらい高さへの球でした。4年間続けてきた送球練習が結実し一丁前にシートノックをできるようになったのを示したこのプレーは、大学野球での集大成の一つと言えます。井手監督にも直接褒めていただいたのもとても嬉しかったです。東大野球部でなければこんな些細な練習の一幕にこれだけの価値を感じることはなかっただろうと思います。

 

こうしていい意味で自由に、のびのびと野球ができたのは、井手監督、大久保助監督のおかげです。選手が自主的に練習できるこの環境だからこそ、個々が自分の特性を活かして勝利に繋がったのだと思います。お二人の元で野球人生を締めくくることができて本当によかったです。ありがとうございました。

 

ただ、リーグ戦での勝利を目指すこの組織において、自分の存在価値を疑い、学生コーチへの転身を常に考えていたことも事実です。同期が次々とAチームへ上がり神宮デビューを果たしていく中、3年間Bチームでマシンフライを捕り続ける自分に、選手として続けて良いと言える根拠はありませんでした。仲の良い同期との絡みも学コいじりだけは冗談で受け取れませんでした。学コになるか、あるのかも分からない自分の選手としての可能性に賭けるか。この葛藤は1年生の時から何度も何度もやってきました。しかし結局のところ毎回、選手を続ければよかったと後悔する未来が怖くて、もう少しやってみようと完全なエゴを理由に選手の道を選択してきました。そしてその度に自分が情けなくなり、またその葛藤が来ての連続でした。3年の秋になり野球人生もあと一年かと思ったあたりで、徐々にではありますがプレーでチームに貢献する覚悟が決まりました。こんな中途半端な気持ちで選手を続けるのは支えてくれる人たちに失礼だとようやく気づきました。自分のことしか考えていなかった僕は、初めて責任というものについて真剣に向き合いました。憧れの神宮で選手として活躍する未来を手放し、自ら名乗り出て学コになり、惜しみなくノックを打ってくれる島袋(4年/学生コーチ)や小野(4年/学生コーチ)、奥田(4年/学生コーチ)。上手くなって勝利に貢献してほしい、彼らのその想いに応えるために、最後まで全力でプレーすることが、自分が示せる最大の誠意だと思いました。結果選手としてなんとかやり抜くことができました。学生コーチの方々には感謝してもしきれません。ここまで後押ししてくれて本当にありがとう。

 

レギュラー、控え、ベンチ外、スタッフなど様々な立場のチームメイトが、それぞれの思いを抱えていますが、僕はこのチームが、違う立場の人の思いを共感し尊重できるようなチームであってほしいです。このチームにいる以上勝つことが第一です。そして東大野球部は特に勝利のハードルが高いゆえ、勝つことへの想いが他のチームよりも強いと感じます。これがこのチームの良さである一方で、勝つことだけを追い求めすぎると失うものもあります。それに気づかなければ勝利は当事者だけの自己満足に終わってしまいます。勝利の喜びをチーム全員で分かち合えるような、そんな勝利こそ価値があるものだと思いますし、これを読んでいる後輩にはぜひ目指してほしいと思います。

 

最後にイマレの佐々木さん、2年間本当にお世話になりました。走りだけでなく体の使い方を一から叩き込んでいただき、イマレに通い始めてから明らかにパフォーマンスが上がりました。代走という可能性を与えてくれました。怪我の時も常に気にかけ、サポートしていただきました。佐々木さんのおかげで野球が上達する楽しさを知ることができました。

 

ここには書ききれませんが他にもたくさんの方々の支えがあってここまで続けられました。残りわずかですが、形はどうあれ最後まで全力で野球をすることで皆さんへの感謝の意を自分なりに示そうと思います。

 

楽しくなくて一度やめた野球にこんなにも没頭できるとは思っていませんでした。野球の新たな楽しさを教えてくれた東大野球部、そして4年間楽しい日常をくれた同期に感謝を述べて終わりたいと思います。ありがとう。

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次回は10/13(木)、小野優華マネージャーを予定しております。

お楽しみに!