立教大学
立大のこの春のMVPを出すのは正直難しい。というのも、目標としていたリーグ戦優勝を成し遂げることができなかったという結果が全てだからだ。もちろん、この春で良かった点もいくつかある。投手で言えば荘司。今季はエースとして相手を圧倒する投球を見せ、特に最終戦となる明治大学戦では、 154球を投げた2日後とは思えない今季一番となる素晴らしいピッチングを見せた。また、野手で言えば、吉岡、宮﨑、黒岩、山田のスタメン4人が打率3割を超えており、六大学の中でも3割超えバッターが4人もいるのは立大だけである。そして四死球も70選んでおり、これも六大学の中で最多となる。しかしそれでも1点が遠く、勝つことができなかった。目の前で優勝を決められた瞬間は何とも言えない感情になった。今できることは、この結果を真摯に受け止めて秋に向けて練習あるのみ。この悔しさを秋に晴らすしかない。(大河原すみれ)
早稲田大学
この春のMVPは間違いなく、第一先発を勤め上げた加藤孝太郎(3年=下妻一)だ。そもそも、今春は投手陣が早稲田の穴だと言われていた。ところが、ここまで、チーム防御率で見れば明治に次ぐ2位と、投手全体で見ても粘り強いピッチングを続けてくれている。中でも加藤は、ここまで、5試合38イニング488球を投げ、防御率0.95、六大学の投手個人成績で堂々の一位である。早東3回戦では、無残塁完封という珍しい記録を成し遂げた。このような結果が出たのは、食事やトレーニングなど全てにおける意識の高い努力があったかなのは間違いない。とは言え彼はまだまだ発展途上である。チームとしてはここまで悔しい試合が続いている。応援してくれているファン、OBの方々の為にも、さらに成長していく加藤を中心に投打が一丸となり、まずは早慶戦勝利を、そして秋優勝をつかみ取りたい。(菊池聡太)
慶應義塾大学
この春のMVPは、投手からは橋本達弥(4年=長田)、野手からは山本晃大(4年=浦和学院)を選出する。橋本は東大2回戦以外の全試合に登板し、東大戦以外は全てクローザーとして試合の最後を任された。5月18日時点で25回1/3を投げて防御率は1.78と六大投手陣の中で2番目の好成績を保っている。いかなる状況下でも万全の状態で臨めるよう最高の準備をし、毎試合安定した投球で試合を締めくくる姿はまさに職人である。その職人的準備で裏付けられた確固たる自信により、マウンド上では圧倒的オーラを放ち相手打者を圧倒した。4年生としてリーグ戦に臨む姿勢を背中で語ってくれた彼が投手のMVPだ。一方の山本は4年生となった今シーズンから本格的にリーグ戦デビューを果たすと、ここまで全試合にスタメンとして出場し、打線の中核を担い、安定した守備を務めるなど、非常に大きな役割を果たした。これまでとても層の厚かった慶大外野陣の中でその存在は隠れていたが、ポテンシャルは予てより光っていた。ラストイヤーはその才能を存分に発揮するだけでなく、人一倍勝利にこだわり、仲間を思う姿は味方を奮い立たせる。4年生の意地を見せてくれた「熱い男」、我らが山本が野手のMVPである。(服部昂祐)
明治大学
チームメイトから全幅の信頼を置かれている副将・山田陸人内野手(4年=桐光学園)がこの春のMVPだ。第5週の法政大学2回戦1点ビハインドで迎えた9回の同点タイムリーヒットは皆様の記憶に鮮明に残っているだろう。あの一打がなければ、第6週を終えて優勝争いに「明大」の名前を連ねることはなかった。今シーズン序盤は明大打線の4番を任され、チームを勝利に導く打撃を見せてくれたが、中盤から彼にとって決して好調とは言えない苦しい試合が続いた。しかしあの試合は「陸人に繋げば」そんな思いがベンチに流れていた。全員で繋いだこれまでにない絶好のチャンスでチームメイトそして応援してくださる方々全員の期待に応える一打となった。また、フィールドに主将・村松開人(4年=静岡)がいない今季は副将の山田と蓑尾海斗(4年=日南学園)が主将の穴を感じさせない存在感でナインを統率した。今後も“熱い副将”が優勝を手繰り寄せる活躍に期待している。(鈴木一真)
法政大学
この春のMVPは、全会一致で篠木健太郎(2年=木更津総合)であろう。下級生ながら堂々と気迫のこもったピッチングで今春の法政野球部を支えてくれた。今春の第一戦目、早稲田大学戦では9回145球の激投の末、大学初勝利を収めた。その後の試合でも一戦目の先発を任され、今年の法政大学野球部の中心選手として戦った。二戦目はなかなか思うようなピッチングができなかったと話すが、どんな状況でも「篠木が頑張っているから、バッティングで取り返そう」というチームの雰囲気があった。それはきっと彼のピッチングだけでなく人柄がチームの雰囲気を作り上げているのだろう。また彼は普段、とても穏やかな話し方をする。そこからは想像がつかない彼のマウンド姿は、チームにスイッチを入れているように感じる。この春のMVPは間違いなく篠木である。だが結果として「優勝」は掴み獲れなかった。この悔しさをバネに篠木を含め法政大学野球部の成長を楽しみにしていてほしい。秋は必ず日本一になりたい。(宮本ことみ)
東京大学
この春のMVPとしてエース井澤駿介(4年=札幌南)の名前を挙げたい。今季はここまで4カード全ての1回戦に先発登板し、東大が守った全86イニングのうち1/3以上となる29イニングを投げ、フル回転で東大投手陣を支えている。特筆すべきは3カード目の早稲田大学戦での熱投だろう。1回戦を9回2失点で完投。1点ビハインドで迎えた9回裏の阿久津怜生(4年=宇都宮)の劇的同点ソロ本塁打を呼び込んだ。翌日の2回戦にも3点リードの6回から救援登板し、今季のチーム初勝利の期待を背負ってマウンドに上がり堂々のピッチングを見せるも、ここは早稲田打線に意地を見せられ最終的に引き分けた。2試合とも勝ち切ることこそできなかったものの、井澤なくしては展開しなかったチーム目標である最下位脱出をかけた接戦だった。2年春から先発マウンドに立ち続け、試合を作り続けるその姿は一般ファンの方から「偉人」と呼ばれるほど。偉人・井澤の大車輪の活躍に野手陣が応え、投打の噛み合った戦いで秋季リーグ戦こそは悲願の最下位脱出を果たしたい。
応援席から
スポーツ法政新聞部
昨年は新たに加藤重雄監督、大島公一助監督を迎え頂点を狙ったが、投打がかみ合わず春季4位、秋季5位と悔しい結果に終わった。
今季は、昨年春秋ともにベストナインを獲得した齊藤大輝(4年・横浜)が主将に就任。さらに昨年まで2人だった副将も3人体制となり、新体制で王座奪還を目指す戦いが始まった。
迎えた春季リーグ戦、開幕カードで対戦した早大相手に、1回戦での新エース・篠木健太郎(2年・木更津総合)の完投勝利もあり、2連勝で勝ち点獲得と最高のスタートを切った。さらに慶大とのカードでは、1、3回戦ともにサヨナラ勝利を挙げ、昨年なかなか見られなかった粘り強さを見せた。東京六大学野球リーグ最多タイとなる46度の優勝を誇る『東京六大学の王者』は、かつての栄光を取り戻すために、着々と前進している。
神宮六景
学生野球のメッカと呼ばれる明治神宮野球場で行われる東京六大学野球は、私にとって憧れの原風景であり、あの唯一無二、独特の雰囲気に包まれる場所は、私に青春の心を思い出させ、時に鼓舞し、今でも成長させてくれる、言わば心の故郷であります。天高くこだまする応援団の声、カラダの芯まで感じる太鼓の響き。試合の流れを敏感に感じ取る生粋の野球ファンのどよめき、好プレーに対する盛大で惜しみない拍手。各校学生の応援。運営を支えるOB。同窓の仲間、かつてのライバルたち。六大学の各選手たちはそんな最高の舞台で、先人たちが守り、積み上げてきた歴史と伝統を感じ、自校のプライドをかけて熱戦を繰り広げる。これらすべてのひとつひとつが、これからも東京六大学野球が東京六大学野球であり続けるためには欠かすことが出来ない、守っていくべき要素だと思います。
また、近年、日本野球界ではアメリカのメジャーリーグで二刀流で大活躍する大谷翔平選手や日本プロ野球で史上最年少で完全試合を達成した佐々木朗希選手を輩出するなど、統計学・測定技術の発達に基づく評価・技術の革新、フィジカルの向上等により、個々のプレーヤー単体としてのレベルが急速かつ飛躍的な進化を遂げています。このことは野球というスポーツ全体のレベルアップとして大変歓迎すべきことであり、今後、大谷選手や佐々木選手を超えるような記録的な成績を残す型破りな選手が東京六大学野球からもたくさん出てくることを楽しみにしています。
一方、個人の活躍がクローズアップされる中でも、やはり野球は団体スポーツであり、特にアマチュア野球では、個々の力の結集の結果、チームワークで勝敗が決まるという野球本来の醍醐味も失ってもらいたくないと思います。東京六大学野球は、各校がそれぞれに独自の特色を持っており、各校がそれぞれ「○○大学らしい」戦いをすることが東京六大学野球の魅力でもあり、これからも各校の戦いぶりに注目していきたいと思います。
大川広誉(慶應義塾大学OB・平成7年卒業)